課題
- 列車模型1,000両、385,000個のライトから成る世界最大級の鉄道模型の制御。
- ダウンタイムの影響なく、1日20時間、365日運転
結果
- 柔軟でスケーラブル
- 高い運転信頼性
ハンブルク、エルベ川沿いの歴史的倉庫街にある世界最大級の鉄道模型ジオラマワールド「ミニチュア ワンダーランド」は、世界各地から年間150万人の観光客が訪れ、鉄道模型愛好家を刺激する人気のスポットだ。
総面積1700m2に及ぶユニークなミニチュアワールドの建設には、120万作業時間を要した。高度に洗練された技術に加えて、ミニチュア ワンダーランドは細部の精巧さで知られる。走行する模型の数は29万個。列車、自動車、船舶はもちろん、一分ごとにナフィンゲン空港から離陸する飛行機さえも飛んでいる。世界に類のない、画期的な小宇宙が来場者を魅了する。
課題
ミニチュア ワンダーランドの着工は2000年。双子のGerrit BraunとFrederik Braun、そしてStephan Hertzによるプロジェクトがスタートした当初、多くの人々は技術的に実現不可能だと嘲笑した。しかし、2001年の開館時に、その嘲笑は賛美の声へと変わった。展示物は人々を夢の世界に招待する。世界中の精巧なミニチュア風景を展示するだけでなく、最新の出来事をハイライトする。
年間365日オープン、平日・日曜日・祝日を問わず、あらゆるシステムを半永久的に稼働させるためには、400名を超える従業員の多大な献身だけでなく、こうした課題に対応できるハードウェアとソフトウェアも必要となる。架空の町ナフィンゲンでは、1,200両の列車だけでなく、52万個以上のライト、11,000台の自動車、52機の航空機、16隻の船舶といった様々なシステムコンポーネントやサブシステムを同期制御しなければならない。車の走行と信号機と同期させ、街頭や住宅の照明を制御して、昼夜のシーンを演出する必要がある。
「ワンダーランドの運営には高度な信頼性が必要だ。それは我々がDelphi を20 年間以上使い続けた経験から明らかだ。」
Daniel Wolf, Minatur-Software-Developer
アプリケーション
直接、手で触れることはできないものの、視覚、嗅覚、聴覚でとらえられるあらゆるものが非常に賢い技術によって駆動・制御され、疾走するレーシングカーのエンジン音、熱狂する観客の歓声、空港の喧騒が精密に交錯する空間を実現する。こうした驚くほど複雑な技術的挑戦を牽引しているのは多種多様なDelphiプログラムで、20年以上にわたり、バックグラウンドで稼働、広範なソフトウェア環境を支え続けている。Delphiベースのコードベースは現在、約100万行に達する。
もちろん、待ち時間管理機能付き発券システム、倉庫管理、スタッフの勤怠記録といった業務アプリケーションも、信頼性の高いDelphiアプリケーションだ。
車両制御システムは、車両/航空機/船舶のルートを計画、モニターし、さらに、走行中の他の車両に対して優先すべき消防車の派遣も行う。自動車は「コントロールド・コインシデンス(controlled coincidence)」によって制御され、別のルートを選んで現実的な交通パターンを探る。とはいえ、交通ルールは厳密に順守する。例えば、ワンダーランドでは、小型車であっても右側通行が義務づけられ、渋滞時には交差点内に進入させず、大型貨物車両は他のルートが利用可能な場合、ナフィンゲン中心部を通行させない。
フォーミュラ1 モナコサーキット
ハンブルクのミニチュア製作者たちによる最新プロジェクトは、これまでにない規模を誇っている。全長24メートルのレーストラックに再現されたモナコサーキットでのリアルなF1レースだ。
このサーキットではF1とフォーミュラEのレースが開催される。各レースは20台で構成され、同時にコース上を走行できるのは最大14台までである。コースレイアウトは、スタート位置のグリッドを縮小して、モナコ市街地の景観を忠実に再現、一部の区域を多少「圧縮」して、市街全景を俯瞰できるようにした。
実際のレースでは、車両は時速約300km(約185マイル)に達する。ミニチュア ワンダーランドの縮尺では、これは毎秒約1メートル(約39インチ)に相当する。コースを修正し、衝突を回避できるように、計算スレッドは10秒先まで予測する。混戦時には、オーバーテイク(追い越し)は難しいと車両自ら判断した場合や、レースコントロールから後続車に進路を譲れと指示が出た場合(「ブルーフラッグ」)、これらの計算の一部を破棄する必要が生じる。これは各レーシングカーが知能を持ち、自ら判断を下していることを意味しているのだ!
全レースはリアルタイムで計算され、各車両には独自のレース戦略が割り当てられる。また、現在の世界ランキング上位のドライバーには、レースの進行を個別に制御する異なるパラメータが適用される。Delphiコードは乱数も生成するため、ミニチュアのマックス・フェルスタッペンが必ず勝利するとは限らない。
ミニチュア ワンダーランドはDelphiによって制御されており、あらゆることがライブかつリアルタイムで起きている。中核となるコンポーネントは、Delphiで組んだCarsystemソフトウェアで、まさにこの場所で魔法が起きているのだ。
車両駆動システム
車両のユニークな駆動システムはどのように機能するのか?約5cmというサイズのため、車両にはギアボックスもモーターも、さらにはバッテリーすら搭載されていない。車両は、路面に配置した磁石「ハルバッハ配列」の磁場を駆動力とし、路面下の第二層にセンサーを配して位置の特定と制御を行う。その結果、車両がコース上で手動停止された場合には、追跡システムがこの区間に黄色フラグを表示する。これにより他の車両のルートを確認し、必要に応じて再計算して障害物を迂回させることができる。
「Delphiは、私たちのオフィスで最も人気がある開発ツールだ。」
Daniel Wolf, Minatur-Software-Developer
言うまでもなく、ミニチュア ワンダーランドには他にも数多くの驚くべきDelphiプロジェクトが存在する。例えば、実際のレースと同様、テレビ中継は、コース脇に設置された2インチのミニチュアディスプレイに、各種Raspberry Piカメラからの29のライブストリーミングを流している。ワンダーランドでは、大型モニターでもレースを観戦できる。こうした映像は全体が1:87の尺度で撮影され、画面内に実物大の比較対象がないと、観る者にとってミニチュアと実物の境界線は曖昧になる。細部と全景が相互に影響し合って、圧倒的効果を醸し出している。
追加のプロジェクトとして、当初F1プロジェクト向けに導入され、現在では複数の用途を持つ、サウンドマトリックスがある。小さなF1マシンは音を発しないため、そのエンジン音はコース周辺に配置された19個のスピーカーから流れる。外部ライブラリBASS.DLLを活用し、車両の走行状況(加速、ブレーキ、フルスロットル、アイドリングなど)に応じた適切なサウンドを対応するスピーカーから再生することで、音源の位置が実際のF1マシンの位置と一致するように設計されている。このサウンドマトリックスは、ナフィンゲン空港でも基本構成を変更した形で使用され、飛行機の運行音を提供している。
ミニチュア ワンダーランドのスカイカム・ビュー
開発に大きく貢献したもう一つのアプリケーションがエラー分析である。チームはノートパソコン経由でF1システムに接続し、動作パラメータを取得・分析できる。ここでも技術者たちはDelphiの強みを活用できた。大量のデータを可視化することが比較的容易だからだ。こうして得られたデータとインサイトを基に、F1マシンの操縦をさらに精密に設定でき、特に、狭いレースコース上でのオーバーテイク回数を増やすといった改善が可能となった。
F1サーキットを制御するソフトウェアの基本コンセプトは、ナフィンゲンの港湾、空港、車両など先行プロジェクトに由来する。この制御システムは、ルートを計画、モニターし、走行中の外の車両に対して優先すべき消防車の派遣など、あらゆるイベントを管理する。だが、役割はそれだけではない。このソフトウェアは、一般的な右側通行ルール順守の監視、トレーラートラックなどの大型輸送車両の迂回路への誘導、高速道路の渋滞最後尾でのハザードランプの点灯の設定を司る。
照明制御システムは、設備や車両のライトの他、シーリングライトも制御して、昼夜のシーンを見事に演出する。様々なエリアが完璧に同期化され、日没後は車両や住宅のライトが点灯する。
新プロジェクト
次期プロジェクト「ミニチュア アジアとそのメガシティ」の建設段階では、特に照明制御の分野で全く新しい課題に挑む。夜間にスカイラインが照らされ、超高層ビル全体が映写面となるためだ。1:87の尺度に縮小すると、高層ビルの高さは約1.80メートルとなる。ビル1棟あたり最大7,000個のLEDがファサードを照らし、各LEDはこの目的に叶うよう個々に制御可能でなければならない。技術計画は2025年にハードウェア開発者との緊密な連携のもと開始される。
「Delphiをメインの開発ツールとして使用することで、ワンダーランドの多種多様な要件すべてに対応できる。」
Daniel Wolf, Minatur-Software-Developer
結論
ミニチュア ワンダーランドは、Delphiと優秀な大勢の才能が結集したことで実現した最高傑作だ!20年以上にわたり、Delphiは確実な投資対象、信頼できる開発ツールとしての地位を確立、ソフトウェア資産を保護しつつ、新たな可能性を提供し続けている。
その結果、歳月とともに拡大した既存プロジェクトの管理だけでなく、計画を展開し、全く新しい要件に対応することが、過去も、そして現在も、可能なのだ。新たなプロジェクトの計画は進行中であり、ワンダーランドは今後も何百万人もの来場者を魅了し続けるだろう。
ミニチュア ワンダーランドの詳細については、https://www.miniatur-wunderland.com/ をご覧ください。また、Formula 1に関するブログ記事については、https://blogs.embarcadero.com/ja/how-does-reliable-delphi-keep-this-wonderland-running-365-days-a-year-ja/ をご覧ください。
Delphi